コラム
VR、舞台、映像
VRは通常の映像作品と違って、プレイヤー自身が見るもの(カメラ)を操作するという意味で、舞台を観るのに近いと言われます。だとすると、VR作品を作るうえで留意すべきことと、舞台作品を作るうえで留意すべきことは似ているかもしれません。
そして、舞台作品においても、映像作品との違いは何か、どういう特徴があるのか、という議論が存在します。こちらのブログ(7 Differences Between Writing for the Stage and Writing for the Screen)では、以下のような事を述べています。
Plays are Primarily about the Words; Films are Visual This difference is without question the most fundamental. As a matter of fact, it is so fundamental, it informs everything else when making a comparison. In 2015, when I was commissioned to write my first screenplay, this was the area I knew would be the biggest challenge. Not only was I a playwright—I was a poet and novelist. Words had always been my foremost tool for storytelling.
つまり、舞台では言葉が、映画ではビジュアルが重要だということです。さらに、
On the stage, information is almost always given through dialogue—both literal and through subtext. Aside from stylized presentations (think of Bertolt Brecht), visual elements reinforce rather than replace the dialogue. The same is true when revealing a character’s thoughts, motivations, or psychology.
In a screenplay, words are only used when images cannot stand on their own.
舞台作品では情報は言葉により与えられ、ビジュアルはそれを補強するのに対して、映像作品では、ビジュアルで不足するときに言葉を使う、という事です。
こちらのブログ(Playwriting vs. Screenwriting - Is Your Story a Play or a Screenplay?)では、以下のような事が言われています
Dialogue in play writing is much more forgiving in terms of monologues and length. Unlike screenwriting, what the audience can’t see in visual form often needs to be addressed in dialogue.
In movie scripts, scene descriptors are short, typically three lines. But in playwriting, lengthy descriptions of what the setting is like are found at the beginning of an act. This gives the reader a full understanding of the set and of the theme of the play as well as instructions for the set designers to create the world you intended.
舞台作品では、モノローグや長いセリフが許容されやすく、シーンの最初の説明も長い。一方、映像作品では、せいぜい3行程度、とのことです。
ちなみに小説はどうかというと、こちら(Analyzing dialogue lengths in fantasy fiction)やこちら(How to Write Dialogue: Step-by-Step and Infographic)の分析によれば、発話(dialogue)と地の文(narration)の比率は1:2くらいのようです。
舞台では、観客が視るものを映像作品のようにコントロールできません。舞台では見せられるものも限りがありますし、観客がどこを見るかもわかりません。カメラワークや画面遷移などで演出することもできません。一方、音はコントロールが比較的容易なので、ナレーションや発話は確実に観客に伝わります。
これは、VRでもほぼ同じと言えそうです。つまり、VRにおいても、シーン内に提示するものをどう見るかは観客次第ですし、カメラを演出側で都合よく動かすこともできなければ、画面遷移の概念もありません。なので、言葉をどう生かすかが重要なる筈です。実際、VRではドキュメンタリー作品が多いのですが、このジャンルは「語り」がしばしば重視されるため、VRとの親和性は高いと思われます。他のVR作品でも、通常の映像作品に比べるとモノローグやナレーションの比率が高いように見えます。
Wolves in the Wallsはエミー賞などを受賞した有名なVR映像作品ですが、こちらでも、ストーリーの大半は主人公のモノローグ(あるいは、プレイヤーに話しかける)で進み、登場人物同士が話す場面は少ないです。
これは、登場人物同士の会話が長いと、プレイヤーが無視されているような感覚になってしまうからでしょう。
VRマンガにする作品も、モノローグや長いセリフがあるものの方が、VRの特徴を生かせる可能性があります。学習マンガとかも、説明が長いのでVR向きかもしれません。
投稿:2020/12/29