コラム
VRと読書
VRは視野全体に広がる映像を楽しむのが普通とされているので、VRでわざわざ文字を読むことに関心を持つ人は多くないですね。実際、VR Booksという場合、普通の本に3DCGや音楽などで新しい要素を加える(例えば、本に出てくるアイテムが3DCGで表示されるなど)事を指す場合が多いようです。
ですが、VRで読書(ここではマンガは含めず、文字を読むのが中心の読書)、というのは結構アリなのです。
商用VRタイトルで言いますと、MyDearestさんがInnocent Forest をはじめとする先駆的なタイトルをいくつもリリースしています。
この作品では、360度画像を背景にして、真ん中の円形のフィールドに出る文章をひたすら読むのが基本になります。私も、最初は「これをVRでやって、おもしろいのか?」と疑問だったのですが、いざ試してみると意外に読むことに集中できて面白かったことを覚えています。MyDearestさんは、その後も関連作品をリリースしますが、他の会社で同じような事をする事例はあまり見かけません。
代わりに見かけるのが、VRブックビューワーです。これは、単純に本をVR空間に持ってくるイメージです。
Oculus Go向けには幾つかアプリがあったのですが、Oculus Questではこの手のアプリをストアにリリースするのが難しいせいか、廃れてしまった感あります。SideQuestやVIVEPORTにも、同じような機能を持ったアプリは殆ど見られないです。
ただ、「VRで本を読む」ことが完全に忘れられたわけではなく、「VR内読書」をテーマにした論文もみられます。
Pianzola, Federico, Katalin Balint, and Jessica Weller. “Virtual reality as a tool for promoting reading via enhanced narrative absorption and empathy.” Scientific Study of Literature 9.2 (2019): 163-194.PDF
こちらの論文では、VRで読書を行うことで、物語への「移入」(Transportation)と「共感」(Empathy)が変化することが示されています。
VRでの読書は、まだまだやれることが多いですし、もっと面白くなると思うので、もう一度盛り上げていきたいですね。
投稿:2021/1/06